高次脳機能障害の診断で考慮される神経心理学的検査ってどんなものがありますか
●神経心理学的検査の主要なもの
1.知能テスト
(1)長谷川式簡易認知症スケール改訂版(HDS-R)
・日本で最も広く用いられている簡易認知症スケール。見当識、記憶、計算、語想起等の検査。
・30点満点で、20点以下は認知症の疑い、21点以上は非認知症。
・検査所要時間は約10分。
(2)MMSE(mini-mental state examination)
・世界で最も広く使用されている簡易認知症スケール。見当識、記憶、注意、言語等の検査。
・30点満点で、23点以下は認知症の疑い。
・検査所要時間は約10分。
(3)WAIS-V ウエクスラー成人知能検査
・世界で最も使用されている成人用の全般的な脳機能検査。適用年齢は16歳〜89歳。
・言語性検査(VIQ)と動作性検査(PIQ)を総合して総合IQを算出。VIQは、知識、数唱、単語、算数、理解、類似、語音整列の下位検査から、PIQは絵画完成、絵画配列、積木模様、 組み合わせ、符号、行列推理、記号探しの下位検査から構成。
・IQのほかに、言語理解、知覚統合、作動記憶、処理速度の4 つの群指数が得られる。
・検査所要時間はすべての検査を行った場合、約1時間〜1時間30分程度。
(4)コース(Kohs)立方体組み合わせテスト
・図を見せて、それと同じ模様を積木を使って再構成するテスト。
・検査所要時間は約30分。
2.記憶障害
(1)三宅式記銘力検査
・聴覚性言語の記銘力検査。2つ1組のもの(星―空等の有関係対語と少年―畳等の無関係対語がある)をいくつか読んで聞かせた後に、片方を読んでもう片方を思い出させるというテスト。
・検査所要時間は約15分。
(2)WMS-R 日本版ウエクスラー記憶検査
・国際的に最もよく使用されている総合的な記憶検査で、日本でも標準化されている。言語性記憶、視覚性記憶、これらを統括する一般的記憶、注意/集中力、遅延再生の5項目を 評価。
・検査所要時間は約1時間半。
(3)ベントン視覚記銘検査
・視覚性の記銘力検査。幾何学的図形を覚えて、再生する。再生までの時間は、即時(即時再生)と15秒後(遅延再生)がある。
・検査所要時間は約15分。
3.遂行(前頭葉)機能障害
(1)ウィスコンシン・カード・ソーティングテスト(WCST)
・世界的に最も使用されている前頭葉機能検査。提示されたカードを、色、形、数の3つの分類基準で並べ替えて、達成したカテゴリー数、保続数、保続性誤り数によって評価する検査。
・検査所要時間は約30分
(2)BADS(遂行機能障害症候群の行動評価)
・定型的な神経心理学的検査では反映されにくい、日常生活上の遂行機能(自ら目標を設定し、
計画を立て、実際の行動を効果的に行う能力)を総合的に評価。
・カードや道具を使った6種類の下位検査と1つの質問用紙から構成。各下位検査は0〜4点で評価され、
全体の評価は各下位検査の評価点の合計である24点満点で評価。